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漫画/アニメ僕が初めて買ったマンガの単行本は『キン肉マン』の11巻だった。
何故、11巻だったかと言うと、たまたま友達が学校に持ってきていたのを途中まで読んだから。その後、家に帰って、おばあちゃんに頼み込んで買ってもらったのを今でも覚えてる。たぶん、その時の最新巻だった筈だ。
ちょっと前に岡田斗志夫さんがブログで、『キン肉マン』を「The 集英社マンガ」」と評していたけど、これは僕も全くの同感。で、今にして思えばたまたま初めて買った11巻には、後に600万部を達成するジャンプのバトル漫画のフォーマットが詰まっていて、尚且つ、それは僕が好きな物語の原点になっているように思う。
そんなわけで、今回は『キン肉マン』の11巻の中に見出した、僕が面白いバトルマンガに求める、6つの要素をピックアップしてみた。
■主人公がいなくても成立する10巻から始まった「七人の悪魔超人編」。10巻でステカセキング、ブラックホールを倒したキン肉マンだが、瀕死の重症を負ってしまう。絶体絶命のその時、かつてのライバルであるテリーマン、ロビンマスク、ウォーズマン、ウルフマン、ブロッケンJrの五人がキン肉マンに代わって、悪魔超人との戦いを買って出るというあたりが、この11巻。
この巻では最後の方で少しキン肉マンのバトルも描かれるが、キン肉マン自身はほぼ観客あるいは解説役で、仲間たちと悪魔超人のバトルがほぼ全編に渡って描かれる。
それまでにも、そういうフォーマットの漫画がないわけではないだろうけど、少なくとも僕にとって、これは画期的だった。主人公が不在でも物語が成立する。と言うよりも、シチュエーションや場面によって、仲間キャラが主人公になり得るというのを示してくれたわけだ。
■かつての敵が仲間になる話が前後するが、少なくともロビンマスク、ウォーズマン、ウルフマンの3人はここまで、キン肉マンに対して、明確な敵キャラだった。それが戦いと通じて、友情が芽生えて味方になるというドラマをここで見せてくれる。
これ以前にもそれに近いドラマは『キン肉マン』の中にも存在していたけど、ここまでハッキリした形でそれを示したのは、「悪魔超人編」が最初だったと思う。
11巻の中でも、仲間との友情を馬鹿にされたテリーマンが魔雲天に対して激昂するシーンがあるが、ここまで10巻を費やして友情を結ぶドラマを盛り上げてきたからこそ、敵が仲間になるという展開にも説得力があった。
余談だけど、『キン肉マン』の次作にあたる『ゆうれい小僧がやってきた』でも、日本妖怪と西洋妖怪の対決という同じような図式のバトルがあるのだけど、そこに至るまでのドラマが十分でなかったので、同じように描かれる友情のドラマにまるで魅力を感じなかった。
■主人公のサイドが負ける基本的に主人公は負けないものだ。さらにその延長として、主人公の仲間たちも負けない。なんとなく『キン肉マン』以前に僕が見たり読んだりしていた物語は、そういう展開が多かった。
仲間が主人公の露払い的に登場して負けるというのはあった。あるいは強敵とのファーストコンタクトでまず負けて再戦で勝利するという展開もあった。ただ、どちらの場合もなんとなく最初から負けることが予想できてしまうような場合が多かったと思う。
11巻ではロビンマスクとウォーズマンが敗北する。これは衝撃の展開だった(実はそれ以前にウルフマンも無残に敗れているのだけど……)、どっちの試合も僕は最後の最後までロビンマスクとウォーズマンは勝つと思っていたから。
僕は「ザ・ジャンプ漫画」を挙げる上で『キン肉マン』の対抗馬は『リングにかけろ』かなと思ってるんだけど、『リンかけ』の場合には、例えば世界Jrトーナメントの目標が無敗の完全優勝だったことからも分かるように、基本的には主人公サイドは負けないドラマで成り立っていたと思う。これは読んでいて「もしかしたら……」という要素を読者から薄れさせてしまうことになる。
主人公サイドにも負ける可能性が有り得るというのを示したことで、『キン肉マン』はバトル漫画としての選択肢を広げたと思う。
■強さを数字で示した強さに数字を持ち込んだジャンプ漫画というと『ドラゴンボール』の戦闘力を思い浮かべがちだけど、それよりも速くキン肉マンは超人強度という強さの数値を持ち込んだ。これは画期的だった。
たしか11巻で唐突に示された数字だったとは思うけど、強さの構造を可視化することに成功したと思う。ウォーズマンは100万パワー。対するバッファローマンは1000万パワー。単純にウォーズマンより10倍強いことが明確になった。勿論、1000万パワーを納得させるだけの描写があって初めて成立するのではあるけどね。
さらに、このウォーズマンとバッファローマンの一戦では、伝説のダブルベアークローという名場面が生まれる。ウォーズマンの超人強度は100万パワー。ベアークローを両手に装備つまり×2。さらに、いつもより2倍の高さにジャンプして3倍の回転を加える。100万×2×2×3ということで、1200万パワーの超必殺技が成立する。後に「ゆで物理学」なんて言われる荒唐無稽な理屈ではあるけど、数字がついていることによって説得力が生まれる。これも超人強度という要素あったればこその名場面だ。
■正体不明の味方キャラミスター・カーメンに大苦戦しあわや敗北というギリギリのところまで追い詰められたブロッケンJrの前に謎のジャージの男が現れる。救世主(メシア)だ。
この救世主の正体はなんとなく推測は出来るんだけど、まだこの時点では決め手がなく、謎の超人なのである。このテのキャラは結構、ジャンプ漫画では定番的に出てくる、例えば『魁!男塾』の翔霍なんかがそうだが、11巻で初めて読んだ当時はその登場からワクワクしたものだ。
敵が謎の存在であることはある意味で当然なのだけど、味方の側にも謎の存在がいるというのは、一つサスペンスの要素を投げ込むことになり、またドラマの幅を広げることになったと思う。
■泣ける展開11巻のハイライトとも言えるシーンは、五人の試合が終わり、キン肉マンが五人を迎えに行くシーンだ。多分、漫画を読んで初めて泣いたシーンじゃないかと思う。前述した友情のドラマがここまで成立していたからこそ、この泣けるシーンが見事に輝きを放ったと思う。
ちなみに、このシーンについてはアニメ版がさらに良かったと記憶している。BGMも良かったし、それを含めた演出が秀逸。是非、機会があれば一度、観てもらいたい。
とまあ、長々と書いたわけだけど、僕がバトル漫画に求める要素のほぼ全てが『キン肉マン』の11巻には詰まっていた。同時にこの要素は『キン肉マン』が全編を通して持っていた魅力だと思うし、今に通じるジャンプのバトルマンガが持っている要素だと思う。
……なんか久々に『キン肉マン』を最初から読み返してみたくなって来た。
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