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評価:
¥ 2,394
Amazonおすすめ度:
素晴らしい
中古DVD
全ての意味が詰まったタイトル、明日の記憶。
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『明日の記憶』を見た。若年性のアルツハイマーを発症した渡辺謙扮する広告代理店の営業マンと、樋口可南子扮する妻の物語。先に感想から書くと、悪くない。でも、何か惜しい!という作品。
正直、開始10分くらいで泣きそうになってしまった。なんと言うか、そこに感じたのはある種の“恐れ”だったと思う。もし、自分がこの主人公のようになってしまったらどうしよう?という恐れだ。
若年性のアルツハイマーをテーマにした映画っていうと韓国映画『私の頭の中の消しゴム』を思い出す。主人公が男性であり、より自分に近いと感じられる分だけ、『明日の記憶』の方が感情移入度は高かったように思う。
二つの作品を並べて話を続けると、『私の頭の中の消しゴム』に比べて病気が判明するのが早い。開始数分でアルツハイマーが進行し始める描写が始まる。興行上の尺の問題もあるのかも知れないが、もう少しじっくりと描写を重ねた方が、病気が判明した時により説得力ある落差を描けたのではないだろうか?
監督が堤幸彦だということを、観終わるまで知らなかったのだけど、そう言われれば、堤監督らしい演出も何箇所かあったと思う。街中で主人公を中心にカメラが周るシーンとか、会社を出て行く時に見る幻覚とか、ただ、あれはちょっと恐れを煽りすぎなんじゃないだろうか? 渡辺謙の迫真の演技がさらにそれを加速してるようにも思う。
そうやって煽った恐れをどこに着地させるか? こういうテーマの作品はそれが最大のポイント。『私の頭の中の消しゴム』は「それでも忘れないものものある」という形で希望を描いて着地した。本作はどうか? おそらく「全てを受け入れる」という形で希望を描こうとしたように思うが、序盤から中盤にかけての恐れの描き方が強烈すぎて、どうも上手く着地できていないように思う。
序盤、中盤で何度か泣けた。最後に違う形で涙したかった。なんだか惜しい!
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